【column】dilemmaとyutoriが教えてくれる2018年のマーケティング
体温を感じさせるような「ストーリー」によって成長する2つのブランドがある。
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dilemma(ダイレマ)は、2018年にローンチした東京発ストリートブランド。 ブランドコンセプトは「狭間にある美」。
ブランドを手掛けるCDの杉山浩輝氏を含め3人で運営され、いずれも副業としてこのブランドに関わっているそうだ。dilemmaというブランド名の由来も本業と副業の狭間に置かれるジレンマからきている。
彼らのユニークな点は、こうしたブランド運営のスタイルにとどまらない。
コレクション毎に、海外の無名アーティストに漫画の制作を依頼。 ジレンマをテーマにしたストーリー展開の漫画をコレクションにも落しこんでいる。
アーティストのアサインはまさにレコードを“ディグる”ように、SNSから掘り当てるようにして行われているという。
また、「SNSドリブンなブランドなのか?」と思った矢先に、 「カプセルコレクションを都内のコインロッカーで配布!」という、極めて身体的な企画を走らせたりもする。
漫画とコインロッカー -SNSとリアル、相反するようにも見えるが、 いずれも「ストーリーによる付加価値付け」という意味では共通している。
Weareに詳述されているインタビュー記事が面白い。
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dilemmaがファッション業界で注目を浴びるのと時を同じくして、 多くの起業家からも熱いまなざしを受けているのがyutoriによる「古着女子」だ。
instagram上で古着女子をピックアップして紹介するアカウントで、 元々は現CEOの片石貴展氏が当時在籍していたアカツキ時代に、 日々タイムラインに流れる古着女子の投稿をリグラムすることから始まっている。
現在では20万ものフォロワーを抱えるこのアカウント。 yutoriではSNS意外に古着販売のブランドを運営しており、相乗効果を生み出している。
WWDでのインタビューに対する片石氏のコメントが明快なので引用したい。
“SNSでのストーリー作りにこだわっているからだと思います。 商品を作ったらまず、動画とイメージルックを徐々に公開して、世界観を伝えます。 その後、インフルエンサーに先に配ることでリアルな着こなしが少しずつSNSにアップされるんです。 そうして、ある程度話題になったタイミングで発売をします。 発売後は顧客が着用画像を投稿してくれるんですが、投稿をきちんと見ると、どんな写真の撮り方をしているのか、どんなテイストを求めているのか、顧客のリアルな趣味趣向が見えてきます。 それを次回の商品開発に生かすことで、かなり実態のあるPDCAを回しているんです。”
ファッションの主役はあくまで「人」。
インフルエンサーや顧客がどんな着こなしをするのかを観察し、プロダクトの在り方を考察する。
こうした検証はファッションやビジネスを問わず、人の心を動かすチャンスかもしれない。
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「副業」という関わり方や趣味が高じて仕事に発展するケースは、 自分自身のスタンスを明確にする、「好きなこと」に対する適度な距離の取り方なのかもしれない。
「これで食べていく」「家族を養う」という意識は、 世の中に迎合したコンテンツを生み出す呪いにもなり兼ねない。
そこに「片手間意識」さえなければ、新しいものを生み出すことに無用な気負いは必要なく、「まずは行動」することで結果がついてくる。
ワークスタイルの多様化が芽生え始めた平成最後の年。 自身のスタンスとプロダクトに付するストーリーにこだわった2つのブランド。
モノづくりやビジネスに関わる人々にとって、新しい時代の道標となるに違いない。
dilemma:https://dilemma-jp.myshopify.com/ yutori:http://yutori.tokyo/ 古着女子:https://www.instagram.com/furuzyo/